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9月1日に「金沢グランド劇場」、「グランドスカラ座」の閉館をもって香林坊映画街が消滅しました。試合には単館系の劇場と郊外にシネコンと呼ばれる劇場がありますが、自動車を持たないお年寄りや学生、主婦の方には映画を見にくい状況になってしまいました。ゴメンナサイネ。

 映画館が、大型スーパーに付属するシネコンの影響で閉館するのは、金沢だけのことではなくて全国各地とも同じ状況です。香林坊にも再開発の話が浮上しているので、数年後には新しいスタイルの劇場が出来ると思います。個人としても映画ファンとしても早く実現して欲しいものです。

 子供の頃から映画が好きで、映画館に勤めることになり、33年間勤務しました。昨日まで、洋画は6455本、邦画も正確に記録していませんが、かなりの本数を見ていると思います。自分自身の歴史が、映画の歴史とダブル部分がかなりあるようです。たかが映画というなかれ、映画のおかげで自分の人生が形成されて、今後も映画で生活しようとしているのだから。

 映画が好きでなかったら、多分つまらない人生を送っていたかもしれません。

 子供の頃に観た映画として記憶にあるものは、「ピノキオ」。その影響もあり、ディズニー作品にはかなり愛着があります。(スピルバーグみたい)。当時、テレビでディズニーの番組がレギュラーであって、劇場の予告編が流れていて、次回作に胸躍らせた記憶があります。ディズニーからスタートしてアクション映画を中心に見まくりました。「風と共に去りぬ」や「エデンの東」は当時、まったくつまらないを思った記憶があります。

 高校卒業後、ふとしたきっかけで映画館に勤務することになったのですが、映画はタダで見られるのですが、大晦日も元旦も日曜日も休めない状態が何年も続きました。名古屋や大阪へ出向いて試写室で一般の人よりも先に映画を見れるのはいいのですが、あくまで仕事で、商売になるかと考えると、落ち着いて映画を見れませんでした。多感で映画を見るのが一番です。

 「ビッグ・ウエンズディー」、ジョン・フォード監督の「シャイアン」。「サウンド・オブ・ミュージック」、「さらば愛しき女よ」、「おもいでの夏」、「ラスト・ショー」、そして劇場のラスト・ピクチャーショーとなった「ワイルドバンチ」などが好きな作品ですが、映画一本一本に愛着と自分の歴史がきざまれています。また、宮城まり子の「むねの木の歌が聞こえる」の金沢の上映の試写会でのラストシーンで観客から拍手があった時に、この作品をやってよかったと感じ、金劇でオールナイト7本立てのシネ・マラソンが満杯になったことなども忘れられない思い出です。一般の興行よりも観客と一体になれた映画の方が思い出深いです。

 映画館退職後、移動映画の会社を設立しました。金沢を始め、県内のホールや会館、公民館などで出張上映する予定です。興味のある方は、お問い合わせください。

 映画館の最終日に、花束を数多くいただき、多くの友人、映画ファンに来ていただいて、悲しい日のはずでしたが、人生最高の日になりました。
 本当にありがとうございました。これからも映画を多く見てください。
 (しみず しゅういち・元映画館支配人2002年10月)